<2023年12月に内容を改訂しました>New

キャリアアップ助成金とは

キャリアアップ助成金とは、非正規雇用労働者の企業内でのキャリアアップを促進するため、正社員化、処遇改善の取組みを実施した事業主に対して助成するものです。
2023年10月から、年収の壁・支援に対応するため、「社会保険適用時処遇コース」が新設されました。(参考:ブログNo.42:年収の壁・支援強化のための助成金が新設されます。

①助成金の趣旨

有期雇用労働者、短時間労働者、派遣労働者といった、いわゆる非正規雇用労働者に対し、
<正社員化コース>
<賃金規定改定コース>
<賞与・退職金改定コース>
<短時間労働者時間延長コース>
(本コースは、次の<社会保険適用時処遇改善コース>が新設されたため、2024年3月で廃止となります。)
<社会保険適用時処遇改善コース>
などで、正社員化、処遇改善の取組みを支援します。

②対象企業

・雇用保険被保険者を雇用する中小企業、及び大企業(助成額は中小企業の3/4になります。)の事業主。
・<社会保険適用時処遇改善コース>については、2023年10月以降、新たに社会保険の被保険者要件※を満たす労働者を6か月以上前から継続雇用している中小企業、及び大企業(助成額は中小企業の3/4になります。)事業主。
①被保険者が常時101人以上(2024年10月以降は51人以上)である事業所の場合は、週の所定労働時間が20時間以上かつ所定内賃金が8.8万円以上、②100人以下(同50人以下)の事業所の場合は、週の所定労働時間および月の所定労働日数が常時雇用されている従業員の4分の3以上。

よくあるご質問2-1:厚労省の助成金における中小企業とは

中小企業の範囲は、イ.または、ロ.を満たすことが求められます。

イ.資本金の額・出資の総額ロ.常時雇用する労働者数
小売業(飲食店を含む)5000万円以下50人以下
サービス業5000万円以下100人以下
卸売業1億円以下100人以下
その他の業種3億円以下300人以下
常時雇用する労働者とは、2か月を超えて使用されるものであり、かつ、週当たりの所定労働時間が、当該事業主に雇用される通常労働者と概ね同等(概ね40時間)である者をいいます。

但し、人材確保等支援助成金(中小企業団体助成コース)における中小企業の範囲は、経済産業省の補助金における中小企業の範囲と同一となります。

よくあるご質問1-8:経済産業省の補助金における中小企業の範囲とは

以下のどちらかを満たすことが対象です。

資本金額従業員数
製造業・ソフトウェア業3億円以下300人以下
卸売業1億円以下100人以下
サービス業5000万円以下100人以下
小売業5000万円以下50人以下
ゴム製品製造業3億円以下900人以下
旅館業5000万円以下200人以下
・ソフトウェア業、ゴム製品製造業、旅館業が、厚生労働省の中小企業の定義と少し異なっています。

③助成金額の例

<正社員化コース>
・有期雇用労働者等を正規雇用労働者に転換又は直接雇用した場合に助成。
・23年11月29日以降に正社員化した場合は、支給対象期間が6か月(1期)から12か月(2期)へと、助成の拡充が行われました(1期の場合は半額)
また、対象となる有期労働者の雇用期間を現行の「6か月以上3年以内」から「6か月以上」に緩和されました。

中小企業大企業
①有期→正社員:一人当たり80万円60万円
②無期→正社員:一人当たり40万円30万円
※生産性要件を満たした場合の割り増しは、23年3月31日で終了となりました。

さらに、以下の加算があります。
イ.派遣労働者を派遣先で直接、正規雇用労働者とした場合:28万5000円(①②とも、一人当たりで、大企業も同額です。)
ロ.母子家庭の母、父子家庭の父を、転換した場合:①95000円、②47500円(一人当たりで、大企業も同額です。)
ハ.勤務地限定など短時間正社員制度を新たに規定し、有期労働者を当該雇用区分に転換した場合:40万円(1事業所当たり1回のみです。大企業は、30万円)。「無期から正規」への転換制度を新たに規定した場合も同額を加算。
二.人材開発支援助成金の特定の訓練(ITなど)終了後に正社員化した場合:①95000円、②47500円(大企業も同額です。)自発的職業能力開発訓練または定額訓練の修了後に正社員化した場合の加算は、①11万円、②55000円(大企業も同額です。)
ホ.正社員転換制度を新たに規定し、当該区分に転換等した場合:20万円(1事業所当たり1回のみです。大企業15万円)「無期から正規」への転換制度を新たに規定した場合も同額を加算。

<賃金規定等改定コース>(3%以上増額改定、1事業所年1回のみ)
・有期雇用労働者の基本給を賃金規定等の3%以上の増額改定を行い、昇給した場合に助成。
① 3%以上5%未満:1人当たり5万円(大企業3.3万円)
② 5%以上:1人当たり6.5万円(大企業4.3万円)

職務評価手法の活用により増額改定した場合(1回のみ):
1事業所当たり 20万円(中小企業)
1事業所当たり 15万円(大企業)

<賃金既定等共通化コース>
・有期雇用労働者等と正規雇用労働者との共通の賃金既定等を新たに規定・適用した場合に助成。
・1事業者当たり60万円(大企業の場合45万円)

<賞与・退職金制度導入コース>
・有期雇用労働者等を対象に賞与・退職金制度を導入し、支給又は積み立てを実施した場合に助成。
・1事業者当たり40万円(大企業の場合30万円)
・同時に導入した場合の加算:1事業所当たり16.8万円(大企業の場合12.6万円)

<短時間労働者労働時間延長コース>
・短時間労働者の週所定労働時間を3時間以上延長し、新たに社会保険に適用した場合に助成。(本コースは、次の<社会保険適用時処遇改善コース>が新設されたため、2024年3月で廃止となります。)

中小企業大企業
1人当たり23万7000円17万8000円
※生産性要件を満たした場合の割り増しは、23年3月31日で終了となりました。

<社会保険適用時処遇改善コース>
・従来の<短時間労働者労働時間延長コース>が拡充され、手当支給と組み合わせて実施できるようになるコースです。
・以下の2種類のメニューがありますが、1年目に(1)の取組みによる助成(20万円)を受け、2年目に(2)の取組みによる助成(30万円)を受けることができます。
・2024年1月31日までに取り組みを開始する場合、キャリアアップ計画書を24年1月31日までに管轄労働局に提出すれば、遡及適用が認められます。
・また、対象労働者からの署名を求める賃金台帳確認書の提出が不要となり、キャリアアップ計画書も、チェックボックス形式で記載方法が簡単になっています。

(1)手当等支給メニュー(労働者がすぐに労働時間の延長ができない場合など、手当等により収入を増加させる場合)

要件一人当たり助成額
賃金の15%以上を労働者に追加支給(※)1年目:20万円
(6か月ごとに10万円)
賃金の15%以上を労働者に追加支給(※)するとともに、3年目以降、以下の取組みが行われること2年目:20万円
(6か月ごとに10万円)
賃金の18%以上を増額させていること3年目:10万円

・助成額は中小企業の場合。大企業の場合は3/4の額。
の賃金は標準報酬月額及び標準賞与額、の賃金は基本給。
・標準報酬算定除外の要件から、106万円の壁に対する標準報酬月額が6等級までの労働者が対象です(よって、当面は101人以上の事業所、2024年10月以降は51人以上の事業所での活用が中心になると考えられます)。
・1、2年目は取組から6ヶ月ごとに支給申請(1回あたり10万円支給)。3年目は6ヶ月後に支給申請。

※15%は、労働者が新たに負担する年金・健康保険・介護保険料を目途とするもので、対象労働者の負担するこれらの保険料が15%未満の場合は、その額の手当てでも助成の対象になります(また、保険料相当を上限とする手当てであれば、特例的に2年間は標準報酬の算定から除外されます)。
※基本給のほか、被用者保険適用時に設けた一時的な手当を恒常的なものとする場合、当該手当を含む。労働時間の延⾧との組み合わせによる増額も可。また、2年目に前倒して③の取組(賃金の増額の場合のみ)を実施する場合、3回目の支給申請でまとめて助成(30万円)。

・なお、3年目の18%は、賃上げだけでなく、労働時間の延長を含めての支給額(基本給)ベースであり、たとえ達成できなくても、1,2年目の助成金の返還は求められないようです。
・社会保険適用促進手当ての新設については、就業規則(又は賃金規定)の改定が必要となりますが、そのひな形(2年間時限の付則改正)は厚労省のパンフレットで示されています。

(2)労働時間延長メニュー(従来の<短時間労働者労働時間延長コース>に、賃金の増額を組み合わせることで支給の拡充が図れています)
・対象労働者を、社会保険加入日から2カ月以内に、週所定労働時間を一定時間延長した場合に助成の対象になります。

週所定の労働時間の延長賃金の増額一人当たり助成額
4時間以上-30万円
3時間以上4時間未満5%以上
2時間以上3時間未満10%以上
1時間以上2時間未満15%以上

・助成額は中小企業の場合。大企業の場合は3/4の額。
・取組から6ヶ月ごとに、2カ月以内に申請することが必要です。
・賃金は基本給。
・本コースは、106万円だけでなく130万円の壁(一時的な収入増以外の場合)に対応するもので、特に就業規則の改定は必要とならないことから、幅広い利用が予想されます。
・キャリアアップ助成金の<正社員化コース>との併給も可能です。

④要件

・助成金額に違いがありますが、大企業も対象になります。
・雇用保険の対象事務所で、保険料の滞納がないこと、会社都合の解雇がないこと、過去5年間に不正受給や、労働法違反がないことなどが求められます。
・特に、未払い残業がないことが、賃金台帳・雇用契約書などからチェックされます。

⑤手続き

<受給までの流れ>

・先ず、キャリアアップ計画(3から5年)を策定し、労働局又はハローワークの認定を受け、就業規則等を改定します。
・次に、その計画に基づき、6か月以上雇用していた有期雇用労働者等に対し、正社員転換や賃金アップ(手当支給や労働時間の延長を含む)等を行います。
・そして、アップした賃金などを6か月間支払った後に、2か月以内に支給申請を行い、支給決定の後、助成金が振り込まれます(キャリアアップ計画策定から入金まで1年半から2年近くかかるのが通例のようです)。

ブログNo.9:キャリアアップ助成金の活用のポイント
ブログNo.10:キャリアアップ助成金の22年4月からの改正のポイント
ブログNo.11:キャリアアップ助成金の過去の採択データ

ブログNo.23:健康保険法・厚生年期保険法2022年度法改正(10月施行分)の主なポイント(2022年5月1日)
ブログNo.30:2022年度補正予算で、キャリアアップ助成金の正社員化コース及び賃金改定コースが拡充されました。
ブログNo.42:年収の壁・支援強化のための助成金が新設されます

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